一緒にいるだけで
奇跡みたいに感じる。
数馬、と呼べば振り返る笑顔があって、それがたまらなく嬉しくて、つい呼んでしまう。
「数馬」
「なあに?」
そのたびに、話題を探す。
どうすっかな。
少しでも長く、数馬の注意をこちらに向けたい。
「作兵衛ってば、最近呼んでから、なに話そうか考えてない?」
くすくす笑いながら図星を指してくる。
「・・・悪いかよ、」
気恥ずかしげに言えば、数馬は首を横に振った。
「呼ばれるだけで嬉しいから、無理に話さなくていいよ。」
にこにこと笑う数馬に思わず見とれる。
揺れる三つ編みも、太い眉も、数馬だからこんなに可愛い。
ただ、おれよりも少しだけ高い背が、ものすごく悔しいから言ってやる。
「中学に入ったら、背ぬかしてやるからな」
数馬は一瞬きょとんとしてから笑った。
「うん、楽しみにしてる。」
これからも一緒にいられるって証明みてえな会話がこそばゆい。
幸せ気分に浸っていると、三之助の声が飛んだ。
「数馬〜、菓子もうねえの?」
数馬が驚いてそちらを向いてしまう。
「もう食べちゃったの!?」
「数馬の菓子はうまいからな!」
左門も言って、からからと笑った。
数馬の意識は完全にそちらへ行ってしまって、もうおれの事なんか見ねえ。
すげえ悔しいけれど、それでも今は。
一緒にいられるだけで、こんなにも嬉しい自分がいるんだ。
2011.10.27
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