知られたくない
男の子たちは、無邪気に身体測定の結果を見せっこしている。
身長の数字でわいわい言っているのをなんとなく微笑ましい気持ちで見ていたら、三之助がこちらを振り返った。
「数馬のも見せてよ。」
ぼくは、にこりと笑って宿題のプリントを丸めたもので三之助の頭をはたく。
「いっでえええ!」
「あのねえ、身長だけなら教えるけど、見せるのは絶対嫌だ!」
三之助はなんだよけちー、と言うけれど、身体測定にはもちろん体重が表記されている。
知られたくないと思うのは当然だ。 この場には作兵衛もいるし。
・・・多分この場で一番重いのはぼくだ。
女子だし、身長もそれなりにあるし当然と言えば当然なんだけど!
それでも知られたくないって言うのは歴とした乙女心なんだから仕方ない。
ぼくは宿題を元通りにして、公園に据えられているベンチへと戻る。
きらきらとブランコの鎖が光を反射している。
左門が立ちこぎを始める傍らで、三之助はまだ痛がっていた。
自業自得!と声をかける。
「ひっでえ! 俺はただ胸囲が知りたかっただけなのに!」
「そっちか!」
もう一度手加減なしで、はたこうとベンチから立ち上がるのと同時に、作兵衛が三之助を蹴った。
ぽかん、と立ち止まってしまう。
作兵衛?
「おっ前は、恥を知れーーー!!!」
げしげしと、蹴り続ける作兵衛に三之助が痛い痛いとわめく。
ああ、あれじゃ、確実に三之助ケガしちゃう。 止めないととそちらへ近づこうとぼくが口を出す前に左門がブランコから飛び降りて、二人の間に割ってはいった。
「三之助、口は禍の元だぞ!」
「身にしみてわかりました・・・。 てか、作兵衛必死すぎんだろー!」
「うっせえ!! お前は反省しろ! 数馬に近づくなあほ!!」
言い合いながらも、もう作兵衛は三之助に手も足も出さない。 三之助にもケガはないようだしと、
安心して藤内と孫兵を見たら、二人も笑ってくれた。
そうしていると、作兵衛がこちらへ来て数馬、と呼んだ。
「作兵衛、あんまり乱暴はだめだよ。」
「いいんだよ、三之助は丈夫なんだから。 ・・・むしろ蹴り足りねえぐらいだ。」
「作ちゃんてば・・・ でも、ぼくのために怒ってくれたんだよね。」
ありがとう、と作兵衛を見ると、気恥ずかしげに目線をそらされてしまう。
その耳がほんのり赤いのを見てとって、嬉しくなる。
本当に照れ屋だなあ。
「で、さ、 数馬の身長っていくつだ?」
「え、う、うん。」
こちらへ向き直り本題だと言わんばかりの作兵衛に、ぼくの身長を教えると難しい顔して、二度三度彼は頷いた。
不思議に思いながら、ぼくも聞く。
「作兵衛の身長は?」
「・・・数馬より高くなったら教える。」
その顔がやたら、印象的で、
秋のきれいなきれいな夕暮れに染まる公園の、時が止まったかと、一瞬本気で思った。
2011/11/04
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三之助は数馬相手だからこういう事が言える。
普通の女の子には言えない普通に純情な男の子です。
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