「なあ、手合わせしねえ?」
おれが、顔をみた途端いうものだから、数馬は少し驚いたようだけれど、ニヤリと笑って返してくる。
「峠の冷やし飴な。」
「おれは、町のところてんだ。」
負けるつもりなど、毛頭ない。絶対奢らせてやると、構えをとった。
暑い、うだる。数馬は既に上衣を脱ぎ捨てて、風通しのいい縁側でごろりと横になっている。その背中を足で押して、冷やし飴だぞ、と言えば、数馬はがばりと起き上がった。
「いただきます!」
「おう。」
一口飲んで嬉しそうに数馬の顔が緩む。それを黙って、ただ見ていた。
冷やし飴が半分ほどになってから、数馬がこちらをみた。
「お前の分は?」
「今月金ねーもん。」
「…しょうがないなあ。」
突然目の前に冷やし飴を差し出されて、ぽかんとする。おずおずと受けとれば、一気に飲むなよ、と念を押された。
そのまま数馬が立ち上がり部屋を出ていくものだからますます訳がわからない。
ちょっとだけ口に含んだ冷やし飴は、ひどく甘く喉を潤した。
戻ってきた数馬は、また何か飲み物を持っていた。それをぐいとおれに渡して、傍らにおいていた冷やし飴を口にする。
「早くそれ飲め。…帰ってから、録に水分とってないだろ。」
「大したことねえし…」
ぎっと睨まれて、慌てて器の中身を飲む。思いもしなかった味に目を白黒させた。
「しょっぱ!なんだこれ!」
冷やし飴の後だから余計にそう感じるんだろうか。数馬はちゃんと飲め、と怖い顔で告げる。
「熱中症対策。それ飲んだら、普通の水でも茶でも飲んで口直ししていいから。」
飲みたくなくて、くるりと器の中身を回せば、数馬が俺の額に手を当てた。
「とりあえず大丈夫みたいだけど、やばい顔してる。すぐに気づかなくて悪かったよ。」
ひたりと当てられた数馬の手のひらは、水を触ってきたせいか冷たい。すぐに離れていくのが惜しい気がして、数馬の目をみれば、ふいとそらされた。
「飲まないなら、もうお前と二度と手合わせしない。」
「なん…意味わかんねえ」
思いきって嫌々器に口をつけた。やはりしょっぱい。
「自分の体調に気づかない奴となんて危なくて手合わせしたくないよ。」
安堵した様子で冷やし飴を飲む数馬に、心配かけていたのかとようやく気づいた
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