おだんご


うーん、と唸った。
お日様がぽかぽかと気持ちいい。
午後、珍しく授業のない今日は、作兵衛と一緒にお団子屋に行く予定だった。
だけど。

「悪い!」
ぱんっ! と両手を打ち付けて頭を下げる作兵衛に、数馬は委員会じゃしょうがないよ、と笑った。
なんでも急ぎの修補で、一年生には難しく食満先輩は実習で学園にいない。
「また今度行こうね」
そういって、笑顔で別れた。
はずなのに。

「・・・作兵衛となんて、毎日顔あわせてるのに何でこんな残念なのかな〜・・・」
呟いて、縁側で足をパタパタさせる。
委員会も、今日は新野先生が一日いて下さる日だから、医務室にとどまっていなくてもいい。
「うー」
ぱたぱたと足を上げ下げしていると、背後から声がかかった。
「どーした? 数馬。 しょんぼりしてる?」
「藤内〜、しょんぼり? うーん? よくわかんないや。」
なんだそれ、言って、藤内はくすりと笑う。
僕も笑う。
藤内が隣に腰掛けようとしたので、少し動いて場所を空ける。
「なあに?」
問うと、藤内はにっこりわらって僕を見た。
「しょんぼりしてる数馬君は、お団子食べたら元気になるかな?」
お団子、という言葉に僕はどきりとする。
それを、藤内はお団子につられたのだと思ったのだろう。
「食いしん坊だよね、数馬って。」
「それは藤内もでしょう?」
「うん、だからさ、この前、数馬が行きたがってたお団子屋いこうよ!」
「新しくできた?」
それは、作兵衛と行こうねって言ってた所で。
どうしようかな、と思う。
ぽかぽかといい陽気。せっかく空いた穏やかな時間。
うーん・・・。
作兵衛とだけしか、行かないって決めてたわけじゃないし・・・。
「うん! 行こうか。 それでみんなにお土産も買おうよ。」
「よっし! じゃあ、いくぞー!!」



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「でね、藤内とお団子屋に行ってきたの。」
数馬が穏やかに笑って、包みを俺に渡す。
「それ、お土産ね。 作兵衛はいつも頑張ってるから、ちょっとおまけもつけてみました。」
受け取って、ありがとうと告げる。
自分でも驚くほど、ぼそぼそとした声が出た。
その様子に数馬が眉をひそめる。
「どうしたの? 具合悪い?」
「・・・いや! なんでもねえ!」
何でだろうか、もやもやする。
数馬と団子食べに行くのは、俺だったはずなのに。
そんなもん、いつでも行けばいいじゃねえかとも思うのに。
ああ、くそ、おちつかねえ。
「藤内と、行って、楽しかったか?」
俺と行くよりも。そう言いそうになって、口をつぐむ。
ああ、何がいいてえんだ。 俺は。
きょとんとした顔で、数馬がこちらを見る。
ああもう、笑って、ありがとうまた今度俺とも行こうな、そう言って別れれば良かっただけの話なのに、ぐだぐだだ。
本当、この感情なんなんだどっからきた。
ぐるぐると行き場のない考えにはまり込んでいると、不意に数馬が不機嫌そうに眉をしかめた。
手が伸びてきた、と思ったら、でこに ぺちいんっ と小気味いい音が炸裂する。
「何で、デコピンするんだよ!」
「ふて腐れてるからだよ! なんだよ、僕だって作兵衛と行くの楽しみしてたのに!」
怒った顔と紡がれる言葉に、あれ?と思う。
あれ? なんだ? どういうことだ?
「藤内と行って、すっごいたのしかったよ! 同室だし気も遣わなくていいしね! 話だって合うし!」
「かず・・・」
「でも、作兵衛と一緒に来たかったなあって思って・・・、思ったのに! 今度行こうねって、お団子じゃなくても、どこでも・・・」
ひとしきり言ったあと、数馬はあがった息を整えようと努力していた。
怒られているというのに、俺は、なんだか気分が浮上していく。
秋の涼やかな風が、頬を撫でていく。
包みをぎゅっと握って、まだ、息が整わない数馬を見る。
「なあ、これ、一緒に食べねえ?」
「・・・僕、食べてきたばっかなんだけど。」
「隣にいてくれるだけでいいからさっ」
勢い込んで言えば、どう受け取ったのか、数馬はまたきょとんとした。
やがて、くすりと笑うと、しょうがないなあ、といって俺を見る。
その笑顔が、なんだかとても嬉しくて、眩しくて、
答えのでない感情が、また一つ増えた。