夢を見た。
ぱしゃん!と飛び跳ねたそれは魚だった。
そして水を、見る。
要するに夢の中でぼくは、魚を見る人間でありその魚自身でもあった。
魚は、あのきらきら光る星の中を泳ぎたくて、ぱしゃんぱしゃんと跳ね続けていた。
それを見ている人間は、池の水にも星が映っている事を知っている。
確かにその魚は星あいの中で泳いでいるのに、魚自身は気付かない。
魚のぼくは夜空にいけない事が悲しくて、人間のぼくはそれが滑稽で可哀想な事に思えて、
「きみは、星の中にいるよ、って言おうとした所で目がさめたんだ。」
ふうん、と気のない返事をしながら、団子をほおばっているのは藤内だ。
「もう、なんの夢見てたのって言うから、話したのに!」
「だって数馬、魚魚言うからてっきり、おいしい魚食べてる夢でも見たのかと思って。」
「え、ぼく寝言言ってた?」
「うん。 数馬結構多いよ、たまに笑ってるし。」
「えー! 知らなかった〜・・・。」
恥ずかしくなって、縁側におろしている足をばたつかせる。
「あのさ、」
「どしたの作兵衛。」
ぼくを挟んで、作兵衛と藤内が会話を始めた。
「それ、おれに見せつけてる?」
「さー、なんのことだか。」
藤内が言うと、作兵衛が悔しそうに藤内を睨む。
「二人で会話するなら、ぼくどくよ?」
よいしょと腰を浮かせようとすると、両側から腕をつかまれた。
とすん、と腰が床に落ちる。
「「ここにいろ。」」
「え?」
珍しくそろった声に、首を傾げる。
「数馬が真ん中。 これが最大限の譲歩なんだからな。」
藤内が言って、ぼくの腕にぎゅっとしがみついてくる。 睨む目を作兵衛に向けて。
「っ、おまえ、数馬と同室なんだから、ちょっとは遠慮しろ!」
作兵衛もぼくの腕を掴む手に力を込める。
結局はぼくを挟んで、2人だけで会話を続けるわけで。
あーあ、と溜息をつく。
おいてけぼりなぼくは、夢を思い返した。
・・・夢の中の魚は、どうして星の中を泳いでみたかったのかな。
ゆるゆると夜になり、とっぷりと暮れた空は、自分のいる水の中との境をなくした。
いけそうだったのだ、どこまでも。
きらきらと燃える小さな灯。
あそこに行けたら、きっと今より幸せだとそう思えたから、魚のぼくは空へ思いをはせた。
でも人間のぼくは知っていたんだ。
行けもしない、空へ行く事なんてないーー、結局今が、幸せだよって。

それはともかく

白熱する言い争いをあのね、と遮って言葉を紡ぐ。
「2人とも手を離してー お団子食べられないよ!」
そう切実に言うと、2人は数馬らしい、と苦笑して手を離してくれた。





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