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<作兵衛>
数馬が訝しげにこちらを見るのを感じてどきりとする。
そわそわしてない? …してねえよ。
数馬は納得せずに益々おれの顔を覗き込む。
言いたい事があるなら言いなよ。
数馬の言葉に言ってしまいそうになったけど、それはあまりに情けない。要は自分の気持ち次第なのだから。
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<藤内>
作兵衛に数馬の事が好きだと言ってみた。滑稽に動揺したあげく躊躇いに躊躇って口を開く彼の目を見据える
「ひかねえからな」
彼は俺と数馬の間に特別な物があると思っている…それでこの言葉が出てきたなら一先ずはよしとするか。
友達としてと返したけれど、信じるかは作兵衛次第。
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<作兵衛>
泣けばいいのに、と作兵衛は思う。そんな辛そうに顔を歪めるのなら泣けばいいのに、数馬は泣かない。
どんな言葉をかけても、背を撫でても効果はなかった。
「お前どこで泣いてんの」
ある日とうとう作兵衛が問えば、数馬は少し笑って、お前のいない所だよ、と答えた。
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<数馬>
泣くなよ、数馬はそう言って涙を溢し続ける作兵衛の背中を優しく撫でた。
嗚咽と供に揺れる背中は情けないけれど、数馬は何度も撫でた。泣き止むまで側にいるともう決めてしまったので早く涙が止まればいいのにと思う。
作兵衛が何に傷ついてるか、数馬にとっては下らない事だった。
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<三之助>
「数馬はなんもわかってねえ」
眉間に皺を寄せる我らが保護者様に左門と顔を見合わせる。
(喧嘩したな)(最近多いな)
彼の頭の中は今、数馬への文句で溢れている。本当に二人とも主張を譲らなすぎだ。
それでも何故か一緒にいるのだから不思議な二人だと左門と苦笑した。
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<藤内>
「作兵衛は優しいの意味、吐き違えてる時あるよね。」
藤内は数馬の嫌気がさした声音に驚く。
「数馬は作兵衛に厳しくない?」
「ないよ。あの調子で人に接してたら搾取される。あんなんで生き残れる気かな。」
数馬の常にない程の不機嫌さに藤内は、早く仲直りしてこいよと苦笑した。
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<作兵衛>
数馬、呼べば数馬はこちらを見ずに、なあに、と返してくる。
いかにも気のない返事に少しムッとして、彼が目を落としている本を奪ってみた。こちらに目を向けるかと思えば、数馬はぱたりと机に伏せる。
あー、もう疲れた。数馬がそう言うから奪った本を見てみると、薬草の本だった。
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<数馬>
雨も風も強く強く。
数馬は一つ震えて濡れた髪を鬱陶しそうに払い閉めた戸に目をやった。
作兵衛なら工具を取り出す程にぼろぼろだが生憎ここに彼はいない…学園で心配してる姿が目に浮かんだ。
頼むから探しには来てくれるなよと、数馬は祈る様に音を立て続ける戸を見据えていた。
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<作兵衛>
「守ってやるよ。」そう言えば、数馬は顔を嫌そうに歪めて、必要ないよ、と言う。
やっぱりだ。 数馬はいつだって、自分で立とうとする。それでもあらゆる災難から、困難から、数馬を守りたい。
口で言えば真っ向から拒絶されるから、胸の内で決意をする。
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<作兵衛>
「珍しい」
嬉しげに笑う数馬は俺に手を差しだす。言われた言葉に眉を顰めてその手を取り穴の外へ這い出る。
ありがとうと言えば彼はまた嬉しげに笑うので目で問うと、お前も案外不運だねと返された。
差し出された手が存外頼もしく思えたと言うのは、止めておく。
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