注意 富松×三反田(女体化)の小学生両片思いです。
「現パロ」「転生」「女体化」がメインです。
サイトに掲載している同タイトルの作品(遊園地まで)を、数馬寄りの三人称で、加筆修正したものです。


数馬は、もうじき仲間達と一緒に忍術学園の六年生になる。桜が、ひらりひらりと散り急ぐ。
 容赦なく降り続ける桃色の小さな花びらは、切なさよりむしろ、叱咤激励してくれているように、数馬には思えた。
 息を吸って吸って、吐ききり、また吸った。どれだけ覚悟をしても、緊張がほどけることはない。うまくなどいかないだろう。黙っていようとも何度も思った。けれどこれ以上隠すのは、騙しているのと同じに思えたのだ。
 罪悪感が募って真正面から彼を見ることができなくなるくらいなら、正直に伝えてしまおうと決めた。
 目を閉じればすぐに浮かぶ笑顔に、数馬は苦笑する。
 もう一度目を開ければ、降る桜の中、待ちわびた姿がこちらへ歩いてくるのが見えた。


序章

三反田数馬には前世の記憶がある。
小さな頃、近所の大人たちの間で噂されていたことを数馬はぼんやりと知っていた。七つになるまでは、そういう子もいるんだって、と両親が夜に話しあっていたのを聞いたこともある。
そんな突拍子のない話が大人達の間で首を傾げながらもなされていたのは、小さな数馬が、親の知らない人物の名前を頻繁に呼び、知るはずのない知識を口にするからだった。
それでも、五才にも満たない数馬は前世がなにを示している言葉なのかを知らなかったし、親に、聞いて聞いてと自分が知っている事をお話していただけだったから、そんな大人達の反応の方が数馬には不思議だった。
七歳になればみんなのことを忘れてしまうのだろうかと、大人達の会話からそう思ったこともあったけれど、結局数馬は忘れなかった。
しかしこの頃になると、数馬にも自分の記憶がおかしいことがわかってくる。
それが大人たちの言う『前世の記憶』なのだと理解していくと、だんだんと、数馬がそれを口にすることは減っていった。周りの反応で、普通のことでないと、察しが付くようになったからだ。
大人たちはあっさり前世を口にしなくなった。やはり、突拍子もないことには違いなかったから、日常のなかの非日常はあっというまに日常へと塗り替えられた。
あの頃――今で言う室町時代、歴史に残っていない『忍術学園』で一緒に育った、藤内のことも孫兵のことも左門、三之助、作兵衛の事も、もう何年も会っていない友達のように、折に触れて、思い出す。
不思議なことに、寂しいとか楽しいとか切ないとか、感情を覚える度に思い出す記憶もあった。
……数馬は、富松作兵衛が好きだった。
それを思い出した九歳の夜。数馬は一睡もできずに、目を腫らした。
もう晩秋だというのに、涙でにじむ目は、桜の花びらが一斉に散る幻をうつす。
止まらない涙に、数馬はしゃくり上げた。作兵衛への思いを数馬がどんなに思い出したって覚えていたって、彼は今ここにいない。自分が現代に生まれ、記憶があるからといって、作兵衛もそうとは限らない。どう考えても会えない確率の方がずっと高いのだ。
仮に会えたとして彼が数馬を覚えていても、あの頃と今とで決定的な違いがある。
数馬は今、女の子だ。
性別が違えば、気付いてもらえる可能性など殆どない。数馬自身も、作兵衛の姿が変わっているなら彼だと気付かないに違いない。
それは作兵衛だけではなく他の面子にも言えることで、この時初めて、数馬は自分が一人きりだと感じた。


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