ご注意!

◆富松×三反田
(ではありますが、お互い自分の気持ちにも無自覚なので、)
◆カプ要素は皆無。

◆山田先生の奥さんとミスマイタケ城嬢の性格、口調が捏造。

◆二人の本名がわからないので、常に「山田先生の奥さん」「ミスマイ」と表記。



1.事の始まりから抜粋。

 数馬は、何だか鬱陶しく感じて寝返りを打った。髪や頬に何かが触れてくる。夜遅くまで予習している藤内の寝相が悪いせいだと、忌々しく思い、起きたら文句のひとつでも言ってやろうと決めた。
 それでもまたすぐに、夢の中へ戻れば、すぐ傍で、ぱんっと、小気味いい音が聞こえる。
「数馬、起きろ!」
「んん…寝るの遅かったのにもう起きたの……、まだ少し寝かせて……とうな…… あれ? 作兵衛?」
 数馬は眠たい目をこすりこすり、目の前の渋面を見た。ここにいるのは藤内の筈なのにと、寝ぼけた頭で一生懸命考えていると、急に鼻をつままれて仰天する。
「ふがっ」
「起きたか?」
 数馬は作兵衛を睨んで半身をおこした。仕返しに叩いてやろうと、振り上げた腕は、作兵衛に難なく躱されてしまう。数馬は悔しい思いで躱された腕を見てから、ええと、と口を動かす。眠たい頭は緩慢な動きで、昨日のことを思いださせた。
「そうだ、小屋に向かってたんだっけ…。」
「おう。結構寝ちまったから、急いで出るぞ。」
 簡易な布をめくって、作兵衛が外の様子を見た途端動きを止めたので、数馬ものそりと動いた。
「どうしたの?」
作兵衛の隣に並び、見たものに数馬も唖然とする。目的の小屋がすぐ近くに見えるのだった。

 数馬と作兵衛はすぐにはその小屋には向かわず、腹ごしらえをして、まずは辺りを散策した。地形を確認して、やはり近くにあった沢で水を汲み、小屋の周りの草を結び簡単な罠をはる。そう警戒してみたものの、明るい所で落ち着いて考えれば、呆れる程に山奥だ。
「なんか、のどかだよねえ。」
「こんなとこまで、嫁探しに来る奴いねえよな。学園長がおれ達をここに寄こしたのは、だからだなあ。」
数馬の言葉を受けて作兵衛が安堵の中に、やっぱり難しい忍務は任されねえなと、少しの落胆を混ぜて、笑った。



3.覚悟 から抜粋

 きいん、と耳鳴りまでしてきて、数馬は落ち着く為に目を閉じて九字を唱え手刀をきる。
 そうすると学園の空気を思い出した。
 脳裏に浮かぶ、色、音、匂い、そう言ったものが、数馬に力を与えてくれる。すっと目を空けると、違和感が目についた。
 何が、おかしいんだろうと、数馬はすきま風の不気味な音を聞きながら目を懲らす。
 焦りは、判断を鈍らせる。猜疑心も、恐怖も。だから数馬は努めてゆっくりと息を吐いた。
 そうして改めて顔を上げると、妙に目のいく場所がある。
(敷物、なんか、向きがちがう……?)
 壁に対して、綺麗に平行に置かれていたから、几帳面だなあと思ったのを覚えている。今は、少し歪んでいた。
 そうだ、これだと敷物に近づくと今度は壁板に違和感を覚え、試しに二、三度叩いてみる。きしむ音がしたかと思えば、敷物が床の更に下へ、落ちた。
(階段……なんてあったんだ。)
 注意深く、下へと続く階段の一段目に足をのせ、敷物を忘れずに元の形に戻す。どうか、ここにいてくれてますようにと必死で祈りながら下っていく。当たり前だけれど地下は暗いから、持っていた火種で灯りを作る。体を支えるように壁に手を当てると、その感触に驚いた。
「何これ、板で補強してある。本当に抜け道なんだ。あんな山奥の小さい小屋の下にこんなのあるなんて……。」
 だから里芋行者さんは、自分の奥さんをこんな山奥の小さな小屋に置いていったんだと、合点する。
慎重に前へ前へ、けれどこのまま進んでも二人がいるとは限らない。ここまでちゃんとした抜け道ならば、いる可能性はとても高いけれど、万が一を考えないわけにはいかなかった。
それも、右に折れ左に折れとしているうちに、万が一で考えていたことが、頭の大部分を占めてきてしまう。 灯りは手元にあるとは言え、暗闇はなんと人を不安にさせるものか。
(作兵衛もいればなあ。)
 思わず浮かんだ言葉に衝撃を受けた数馬は、大げさに首を振って、今考えた言葉を振り払う。そもそも、置いてきたのは自分じゃないか。
 自分がとても弱く思えて、灯りを持っていない手で、ぴしゃりと頬を打つ。
(しっかりしろ。大丈夫だ。もう、三年なんだから。一人でだってやれるだろ。)
そう叱咤しても、本当にこちらであっているのか、いよいよ不安になってくる程、数馬は歩いた。
だから、ようやく行き止まりに突き当たって、数馬は詰めていた息を吐き出す。
ひとまず、立ち止まれた。
これは行き止まりだろうか、それとも扉だろうか。見た目ではただの土に見えた。もし、今通ってきた道がダミーなのだとしたら、すごく手が込んでいる。
考えてもわからないから、とりあえずと数馬はその土壁を叩いた。感触と、こんこん、と軽い音に、思わず、口元がゆるむ。
(当たり、だ。)
 これで二人が、いてくれれば、いいのだけど。
 どくどくと心臓が嫌な音を立て始めて、数馬は胸が痛むのを感じる。
 ぎい、と、扉が動いて、数馬は身構えた。


こんな感じで数馬と作兵衛が、教師も先輩もいない中、頑張るお話です。

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