野菜の皮を剥きながら居間の喧噪を耳にする。タマネギが目にしみて涙がにじんできた。目を擦っていると背後に人の気配がして、にじんだ視界のまま振り返る。
「手伝うよ。」
 そこにいたのは、ワンピースの裾を揺らして三つ編みにしていた髪をひとつに結い直している数馬だった。 つまり、数馬に涙を浮かべているのを見られてしまったわけだ。
 タマネギのせいとはいえ情けない気持ちになって焦って、顔をそらす。
「さっ、きも言ったろ。数馬は客だから。」
「わあ、このタマネギくるね。」
数馬はおれの話なんか聞きもしないで手を洗い、残っているタマネギを全部切ってしまう。
「座ってろよ。」
「作兵衛だけに任せるの不安だもん。」
 悪戯気に笑う数馬に、どきりとしてしまう。台所にふたりで並んでいるという事実が、なんだかとても気恥ずかしく思える。……おれの背が数馬より低いのがいただけないけれど。そんなことを考えて赤くなったり真顔になったり、する。




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