放課後、急にいつもの公園に呼び出された藤内は、着くなり待っていた篠小組になんだよと訝しげな目を向ける。 そして言われた言葉に目を丸くした。
「は!? お前ら、来年うちの学校来るの?」
驚いた、というよりは呆れた声を上げた藤内に、作兵衛は気まずげに、おう、と返した。
あの後、道場から戻った作兵衛が母親に話をしようと、台所に行けば、もうしたい話は通っていた。
今日の夜、お父さんに話をするから、と言われて、そのままあっさりと承諾を得られてしまい作兵衛は驚いた。
それはどの家も同じで、どうも6人の母親の間で交流があり、藤内と数馬の通っている学校の事はそれぞれ気になっていたらしい。
双方、渡りに船だったという事だろうか。
「ふうん、」
「藤内は嬉しくないのか?」
左門が伺うように藤内の顔を覗けば、今度気まずげな顔をしたのは藤内だった。
「いや、そうじゃ、無いけどさ。 ただ、それは今のお前らの意志? 前の記憶に引きずられてないか?」
そう言う藤内に、左門と三之助はきょとんとした顔を見合わせる。
「そんなの当たり前じゃん。」
「今、一緒にいたいと思わなければ、こんな無茶は言い出さないぞ?」
その答えに目を丸くしたのは、孫兵だった。 苦笑して、それから藤内を見る。
「全く、迷子はこういう所まっすぐだね。 僕は少し、ためらったよ。」
「作兵衛は? って、こいつの場合は聞くまでもないか。」
「っ!」
ばっと顔を赤くさせた作兵衛は呻いた。 今の数馬に対して、自分の気持ちもはっきりしていない・・・、と思うのに、周りはもう、承知しているようだった。
そもそも、もしかすると室町の時に想いがばれていたのではないだろうかと思うほど、左門も三之助も孫兵も、作兵衛が数馬に特別な思いを抱いていると、そう信じ切っているようにみえる。
作兵衛はバクバクと落ちつかなげに鳴る心臓の音を聞きながら、ぐるぐると数馬の姿が脳裏に映し出されて、更に顔に熱が集まるのを感じた。
今の数馬と前の数馬がごっちゃになって脳裏を駆け巡るのに、作兵衛はパニックを起こしそうになる。
ただ、はっきりしているのは、自分にとって数馬は特別で、守りたくて、笑っていてほしい。 ・・・弱い所も見せてほしい。 その想いだけだ。
赤い顔のままの作兵衛を見て、藤内は彼にしては優しく笑う。
「ただ数馬にも呆れられるのは覚悟しとけよ。」
「えー、喜ばない?」
不満げに三之助がいい、左門が笑う。
「まあ、呆れられても、考えは変わらないがな!」
「そうだね、結局こうしたいって思うのは、しょうがない。 ・・・? 作兵衛?」
孫兵は、なぜか黙ってしまっている作兵衛を見た。 彼の困ったような表情に、孫兵は首を傾げる。
作兵衛はその視線を受けて、おずと口を開いた。
「あの、さ、数馬には黙っててもらえねえか?」
「ええ、なんで?」
「あ、わかった、作兵衛落ちる事考えてるんだろ!」
「…っ そーだよ!!」
作兵衛が思い切って認めてしまえば、次々と悪態が返される。
「かっこわるい」
「ださい」
「へたれ」
「なっさけな」
作兵衛には返す言葉が無くて、ぐ、とつまる。
「っとに、俺だけ呼び出したと思ったら、そう言う事か・・・・・・。 俺、数馬に隠しごとなんてできないから、悪いな、作兵衛!」
「なっ!」
はあ、と左門にしては珍しく溜息をついて、作兵衛を見据える。
「作兵衛、進退疑うなかれだ!」
「そうそ、心配してる分落ちる確率上がるだけだって。」
「まあ、そんなわけで、数馬には言うからな。 大いに呆れられろ。」
それぞれに言われて作兵衛が絶句していると、孫兵に肩をたたかれる。
まあ、それが最善だと思うよ、と笑う孫兵は、悔しいほどにイケメンだった。
「・・・言うんだったら、おれが、言うよ。」
意を決して作兵衛が言えば、あっさりとみんなは頷いた。
「うん、じゃあ頼んだ。」
藤内が言い、手を振る。 今すぐ行けと言う仕草に作兵衛はそのつもりだとばかりに駆けだした。 急がなければ日が暮れてしまう。 一度帰って自転車を取りに行かねばならない。
勢いに乗らなければ、数馬には言えないような気がする作兵衛はとことん自分が情けなく思えた。
走れば走るほど、数馬の姿が脳裏で駆け巡る。
先程と同じように、室町と、今とがごっちゃになるそれに、ちかちかと目の奥が眩しく光る。
それを夕日のせいにして、作兵衛は家路を急いだ。




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