そんなわけない
数馬が笑うと、どきりとする。
「作兵衛、最近数馬が笑うと目そらさねえ?」
「っ!?」
給食のパンをかじりながら三之助が言うので、あやうく牛乳を吹き出す所だった。
なんとか飲み下して咳き込む。
「あー、孫兵も言ってたぞ。」
左門がそういうのは、孫兵は隣のクラスで会話に参加できないからだ。
っていうかそんな、わかりやすかったか、おれ!
「数馬のこと嫌いなのか?」
「んなわけねえだろ!」
慌てて言うと、にやりと三之助と左門が笑う。 しまった、はめられた。
開いた窓から秋の冷たい風が入ってきて、頬を撫でていく。
なんて答えよう、ごまかそうと回らない頭で考えていたら、左門が朗らかに言った。
「僕は数馬の笑顔、好きだぞ。」
「オレも〜。 数馬の菓子も好き。」
「「作兵衛は?」」
「・・・ッ」
くっそどうしても言わせたいのか、こいつらは。
「いいじゃん、数馬も藤内もここにはいないんだし。 正直に、ほら!」
せっつく三之助がすっげえ憎らしい。
こいつらみてえに、普通に言えばそれだけで解放されることはわかってる。
でも言えるわけがない。
今、数馬を思い出すだけでこんなに心臓がうるさい。 たった2文字、されど・・・だ。
「ぶはっ まあ、この顔見ればわかるな!」
「あはは! いつかちゃんと口で言えよ、作兵衛!」
2人の爆笑に、クラスの連中がこっちを見る。
ちくしょう、すっげえ、悔しい!
2011.10.21
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